ウォール街の物理学者〜「クオンツ」とは一体?〜

「ウォール街の物理学者」という本を読んだので感想を書きます。

 

クオンツとは?

この本では外資系投資銀行の就活方法だの年収だの、勤務実態だのとそんな華やかなものは書かれていません。本には投資銀行のエリート研究部員「クオンツ」のルーツが書かれています。

クオンツとは「数学や物理学の学者(多くは博士号持ち)が株価予測、経済予測のために研究で培った数理モデルをファイナンスの世界に応用し、新たなアルゴリズムを生み出す専門家」です。

一般的に銀行と物理学者というと全く別次元の世界の人のように感じますが、世間の知らないところでは学者が世のために動いていたりするのです。

実際にこの本の舞台であるウォール街(ゴールドマンサックスやリーマン・ブラザーズ等の外資系投資銀行がある場所)には物理や数学の学者が2000人ほどいるそうです。この記事の趣旨とずれるので多くは語りませんが、もちろんそこらのサラリーマンよりよっぽど高級取りです笑

tedの以下の動画でも言われています。

動画の一部を抜粋(スクショです)

本の中身は「金融工学」の歴史

この本はクオンツ誕生のルーツが書かれています。なぜ物理学者がウォール街にきたのか、どんな学者がいたのか、なぜ彼らはファイナンスに応用したのかなど、そういう感じです。

実際に読んでみると、有名な物理学者や数学者のオンパレードです。ジョンフォンノイマン、アインシュタイン、ブラックショールズモデルで有名なフィッシャーブラック、マイロンショールズ他にも多くの学者が登場します。

こういう科学史を語ると必ず時代をどんどん遡るので、フェルマーとかニュートンの話も登場します。

もちろん数学や物理の知識も得られるます。

以下は実際に本文中で述べられていた、数学や物理の知識です。

  • ランダムウォーク
  • 相対性理論
  • レヴィ分布(確率分布)
  • カオス
  • ブラックショールズモデル
  • パレートの法則
  • バタフライ効果
  • ウェーバーフェヒナーの法則
  • ゲーム理論

パッと思いつくだけでもこれだけの専門用語について述べられている。あまり図解がなく文章で書かれているため、少し理解しづらい部分もありますが、こういう本特有の「わかりやすく例える」手法によりうまく、専門分野外の人でも理解できるようになっています。

 

なんでクオンツの歴史をひもとくのにこんな専門用語が出てくるんだよって思いがちですが、研究とは先人達の努力(構築理論)の積み重ねで少しづつ進んでいくものです。新たな分野の歴史を紐解くのには当然、数え切れないくらいの学者とその理論に触れる必要があるわけです。

 

しかしクオンツの歴史(ルーツ)を紐解くだけで、これだけの学者の歴史が複雑に絡まっているとは驚きでした。元々は宇宙物理学者のオズボーンが「株式市場のブラウン運動」という論文を発表したのが始まりだと思われます。

 

一般的にこの本に出てくる学者は皆、多分野に渡り多くの業績を残している人たちばかりです。皆好奇心が強すぎて、手当たり次第本能の赴くままに研究しまくった挙句たどり着いたのが「金融×数学」「金融×物理」というだけのことです。



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印象に残っている点

ルイ・バシュリエ

前に読んだ「フェルマーの最終定理」の記事でも書きましたが、悲運な学者は必ずどの分野にもいるみたいです。

ルイ・バシェリエという数学者について第一章で述べられています。彼は博士論文がポアンカレによって却下されたことでも有名です。生きている間は思考が先を行きすぎていたためか、認められなかった人です。

こういう新たな学問の誕生は必ずと言っていいほど先人達の犠牲の上に成り立っています。彼の論文がなければ先に記述したオズボーンも「株式市場のブラウン運動」という論文を書き上げていなかったでしょう。もしかしたら金融工学の発展は数十年遅れていたかもしれないのです。

 

さらにこの本を通してわかったのは、アメリカにおけるクオンツと日本におけるクオンツの立場の違いでしょうか。

クオンツという言葉自体最近生まれた職種?職業?なので、なんとも言えませんが、日本では、修士号とか経済学の修士、博士もいるみたいですが、本書における「クオンツ」は、本当に学者として一流の数学、物理の博士に限っています。

 

「リーマンブラザースの破綻」はそんな彼らでさえも予想だにしない出来事だと言えるわけです。だからこうして、リーマンブラザーズ以降ウォール街であの日何が起きていたのか?誰がいけないのか?何が原因なのか?を紐解くため、この本をはじめ多くの解読本が出版されているわけです。


 

 

 

 

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投稿者:

中村 俊

中村 俊

1993/09/04生まれ。機械系大学院を休学し、ベンチャーでインターンしている最中。直近では、デカルトの「方法序説」に感銘を受けた。 趣味:読書、web開発の勉強、異分野の論文読んだり、記事書いたり。 最終的には経営者か研究者になりたい。

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